認知症の利用者さんとの接し方と信頼関係の築き方

介護士

介護の現場で認知症の利用者さんと接する機会は多くあります。しかし、認知症の方は記憶障害や見当識障害(時間や場所の認知が難しくなる)などの症状があり、対応に戸惑うことも少なくありません。

適切な接し方を身につけることで、利用者さんとの信頼関係を築き、より良い介護を提供することができます。

本記事では、認知症の利用者さんとの接し方のポイントや、信頼関係を深めるための工夫について詳しく解説します。

認知症の基本的な理解

認知症とは?

認知症とは、脳の病気や障害により記憶や判断力が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。主な種類として以下があります。

  • アルツハイマー型認知症:記憶障害が顕著で、徐々に症状が進行する。
  • レビー小体型認知症:幻視や歩行障害が見られることが多い。
  • 脳血管性型認知症:脳卒中などが原因で発症し、症状が段階的に進む。
  • 前頭側頭型認知症:人格の変化や衝動的な行動が特徴的。

認知症の方の気持ちを理解する

認知症の方は、記憶や判断力が低下することで不安を感じやすくなります。また、自分が混乱していることに気づかず、怒りや恐怖を感じることもあります。そのため、相手の立場に立って接することが大切です。

認知症の利用者さんとの基本的な接し方

ゆっくり、はっきり話す

認知症の方は、言葉を理解するのに時間がかかることがあります。そのため、話しかけるときには以下のポイントを意識しましょう。

  • 短い言葉で伝える:「トイレに行きますか?」→「トイレ、行きましょう」
  • はっきりとした口調で話す
  • 笑顔で優しく接する

否定せず、共感する

認知症の方の発言が事実と異なることがあっても、頭ごなしに否定しないことが大切です。

  • NG例:「そんなこと言ってないですよ!」
  • OK例:「そう思ったんですね。」(共感を示しつつ、安心させる)

例えば、「家に帰らなきゃ」と言われた場合、「ここはあなたの家ですよ」と否定するのではなく、「お家の事が心配なんですね」と気持ちに寄り添うことで、落ち着いてもらいやすくなります。

アイコンタクトとスキンシップを活用する

認知症の方にとって、視覚や触覚からの情報は大切です。

  • 目を見て話す:相手が安心しやすくなる。
  • 優しく肩や手を触れる:スキンシップが落ち着きをもたらす。

ただし、嫌がる場合は無理に触れないようにしましょう。

一緒に行動する(促すのではなく、共にする)

認知症の方は、「~してください」と指示されるより、一緒に行動することで安心感を得られます。

  • NG例:「ご飯を食べてください。」
  • OK例:「一緒にご飯を食べましょう。」

このような言葉に変えるだけで、協力してもらいやすくなります。

認知症の利用者さんとの信頼関係を築く方法

名前を呼んで親しみを持たせる

名前を呼ぶことで、「自分を理解してくれている人」と感じてもらいやすくなります。

  • 例:「○○さん、おはようございます。」

また、「○○さんは○○が好きですよね」と過去の話を交えながら会話すると、安心感を持ってもらえます。

その人の「好き」を大切にする

認知症の方でも、過去に好きだったことや得意だったことは覚えていることが多いです。

  • 昔好きだった歌を一緒に歌う
  • 好きだった食べ物の話をする
  • 趣味(折り紙、編み物など)に一緒に取り組む

このように、「その人らしさ」を尊重することにで、より信頼関係が深まります。

一貫した対応を心がける

認知症の方は、変化に対して不安を感じやすいです。

  • 毎回異なる言葉や態度で接すると混乱しやすい。
  • 介護スタッフ間で対応の仕方を統一する(例:「お風呂に入る時間」「食事のタイミング」など)

安心できる環境を提供することで、信頼関係が築きやすくなります。

感情を込めた対応をする

感情や態度は、認知症の方にとって非常に重要です。

  • 優しく微笑む
  • 穏やかな声で話す
  • 楽しい気持ちを共有する

これらの小さな積み重ねが、相手の安心感につながります。

トラブルが起こったときの対処法

認知症の方と接していると、思わぬトラブルが起こることもあります。その際の対応ポイントを紹介します。

急に怒り出した時の対処法

  • 刺激を減らす:声を荒げたり、大きな動作をしない。
  • 落ち着く時間を作る:少し距離をとることで、怒りが収まることもある。
  • 共感の言葉をかける:例「びっくりましたね。」

物盗られ妄想があるときの対処法

認知症の方が「財布を盗まれた!」と言うことがあります。

  • 無理に否定しない:「それは違います」と言わず、「どこに置いたか一緒に探しましょう」と対応する。

夜間に徘徊してしまう場合の対処法

  • 環境を整える:暗いと不安を感じやすいので、足元灯を設置する。
  • 昼間の活動を増やす:日中に運動やレクレーションを取り入れることで、夜にぐっすり眠れるようになる。

まとめ

認知症の利用者さんと接する際は、「相手の気持ちに寄り添う」ことが最も大切です。否定せず、ゆっくり、穏やかに対応することで、安心感を与え、信頼関係を築くことができます。

また、その人の好きなことや得意なことを活かしながら関わることで、より良いコミュニケーションが可能になります。

日々の介護の中で試行錯誤しながら、利用者さんに寄り添った対応を心がけましょう。

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